SDGsに関する本研究所の五つのテーゼ
① サステナビリティ運動の発祥の地はドイツである。「サステナビリティ」のドイツ語である „Nachhaltigkeit“を最初に用いたカルロヴィッツ(Hans Carl von Carlowitz, 1645 – 1714)の森林学の著書が、刊行三百年を記念して2013年にドイツで顕彰された。このことが、二年後の2015年に国連で「SDGs」が提唱される大きな契機となる。
② SDGs と本研究所の事業との関連は、国連でこの目標が提唱される五年前から、すでに研究所の学術研究テーマとして取り上げられていた。すなわち2010年に本研究所の「年報」第三号で、大橋理事が「サステナビリティが意味するもの」という小論を発表し、つづいて2015年にこれを補完する論考「ドイツのサステナビリティ運動を垣間見る」を、「年報」第七号に寄稿した。
③ このサステナビリティ運動は、60年代の「ローマ会議」以後の環境問題意識の高まりと、それへの哲学思想界での応答とを、重要な思想的背景としている。その応答の代表となるH・ヨナスの未来倫理学について、2008年の「年報」第1号で、安部浩理事が「地球環境学の構想と予防原則の形而上学的基礎づけ ― H・ヨナスの「未来倫理学」の一解釈」を、寄稿した。そして同じくこの「年報」第一号に、谷理事(現在は評議員)の論考「危機と/の意味」を掲載された。2014年の「年報」第六号に掲載の、秋富代表理事の論考「「科学者の社会的責任」」再考 ― 唐木順三の遺言から」も、哲学思想界からの応答の一つである。
④ 本研究所ではその後、サステナビリティ問題を、研究所の外部の研究者の協力をも得た共同研究「共生」を推進し、その最初の成果は2020年に『共同研究 共生 ― そのエトス・パトス・ロゴス』(こぶし書房)という一書となって上梓された。目下、その第二弾の上梓が準備されている。
⑤ 本研究所ではこのように国連の提唱に先立ってサステナビリティに関する学術的な取り組みを行ってきたものの、外部社会と提携してこの取り組みを推し進めるという努力は、特に行なってこなかった。そこで本研究所としては、2030年をゴールとする国際的な「SDG」運動に、特に経済界との連携を視野に入れて、研究所の活動を推進し始めた次第である。哲学、法学、精神医学、言語文化学、等での研究と、現実の経済・法律・芸術・医学、等の分野との連携が、当面の趣旨である。