2024年10月31日現在
代表理事を除き五十音順
大橋 良介 (代表理事・所長)
主な研究テーマ:「悲」の心(コンパシオ―ン)と現代世界。ここで言う「悲」は「悲しみ」のことではなくて、万物との共生の心(カルナー、karunâ)のことです。最初の手がかりは、「触れること」のいろいろの意味(感性論)です。z.B.: 心に触れる、人目に触れる、気が触れる、法に触れる、触れ回る、etc.
本研究所の「所報」にエッセイ「世界遺産の都市バンベルクから」を掲載しました。
最近、猫の額ほどの庭に「千日紅」と近所の川岸に生えていた「野生コスモス」の数株を移植したら、いま花盛りです。
直近の論文・著作・渡航
- ,,DIE LOGIK DES ABSOLUTEN UND DIE LOGIK DES LEEREN – oder: die Durchsichtigkeit bei Hegel und das ,soku' bei Nishitani'', Hegel-Studien, Bd. 56, 2022, S. 117 - 131.
- (英文要旨)
- 昨年5月にバンベルク、10月にテュービンゲンに、それぞれ
講演依頼を受けて出張しました。
秋富 克哉 (代表理事・理事長)
主な研究テーマ:ハイデガーと京都学派の哲学。伝統文化と現代科学技術、特に後者と人間の関係に関心を向けています。その成果として、近年、『原初から/への思索 ― 西田幾多郎とハイデッガー』(放送大学教育振興会、2022年)、『ハイデッガーとギリシア悲劇』(京都大学術出版会、2023年)を発表しました。
近況雑感
- 今年の5月末、上記拙著がきっかけで、イタリア・パドヴァ大学の国際ワークショップ“The faces of tragedy”に参加しました。
- ふだんは大学で工学系の学生に接していますが、その多くが科学技術の将来に非常にオプティミスティックであることに、ある種の戸惑いを覚えています。
安部 浩 (理事)
研究テーマ:哲学(存在論、環境哲学、日本哲学)を専攻。例えば以下のような問題を考えております。物理(学)主義が主潮である現代において存在論はいかにして可能か。将来世代への責任をいかにして正当化しうるか。「無」の思想は(西洋)哲学史上、いかなる位置を占めるのか。
趣味
- 生きる糧は文藝(殊に詩歌)、音楽、美術、書道、遺物舊蹟、演劇(特に古典藝能)、映画等。最近の楽しみは『萬葉集』の通読と、故・小澤征爾氏の未聴の音盤(フォーレ、バルトーク、レスピーギ、プロコフィエフ等)の再発見等です。
齊藤 真紀 (監事)
法律学を専攻しております。専門分野は、商法で、企業の運営や事業活動に関係する法を扱う分野です。
趣味
- 趣味は京都市内の散策で、日独文化研究所もある鴨川沿いは、学生時代からなじみのある散歩コースです。最近は時間がとれず、趣味というよりも退職後の楽しみといったほうがよいかもしれません。
清水 扇丈 (評議員)
主な研究テーマ:Navier-Stokes方程式で記述される、雨の粒や海の波に見られるような時間の経過に伴い境界が変化する自由境界問題の解析に取り組んでいます。
自由境界を固定境界に変換することで方程式が準線形方程式となりますが、線形化問題の最大正則性定理が威力を発揮し準線形方程式を解くことができます。
尺度不変性を保つ関数空間で解を捉えるとともに境界の形状の解析を目指しています。
2024年度はドイツのBad Boll(5月)とOberhof(9月)を訪問し国際研究集会にて研究発表を行いました。
2024年6月に著書「最大正則性定理」(朝倉書店)を上梓しました。
今年度は数学・数理解析専攻長を務め、運営業務で多忙な毎日を過ごしております。
最近の論文
- T. Ogawa, S. Shimizu,
Free boundary problems of the incompressible Navier--Stokes equations
with non-flat initial surface
in the critical Besov space, Math. Ann. 390 (2024) 3155-3219.
https://doi.org/10.1007/s00208-024-02823-x -
- T. Ogawa, S. Shimizu,
Maximal $L^1$-regularity and free boundary problem for the incompressible
Navier--Stokes equations in critical spaces, J. Math. Soc. Japan, 76
(2024) 593-672.
H. Kozono, P.C. Kunstmann, S.Shimizu,
Analyticity in space-time of solutions to the Navier-Stokes equations
via a parameter trick based on maximal regularity
Ann. Sc. Norm. Super. Pisa Cl. Sci. XXV, (2024) 1673-1716.
初宿 正典 (評議員)
主な研究テーマ:ドイツの近代憲法。目下のところ、若い研究者数人との共訳で「ドイツのラント憲法」の今日までのすべての改正経緯を反映した邦訳を『自治研究』誌に掲載を続けています(現在までに、ブレーメン、バイエルン、ザールラント、ヘッセン、ハンブルクまでで、残りの11ラントについても今後公表予定)。
初宿(しやけ)という苗字は稀名のひとつですが、2024年2月に八王子市長
に就任した初宿和夫氏は遠縁にあたるようです。
直近の著作(上記のほか)
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Zur Lage der Gerhard Leibholz-Forschung in Japan,in: Jahrbuch des Öffentlichen
Rechts der Gegenward, N. F./ Band 69, 2021, S. 949 ff. -
「日本におけるライプホルツ研究について」(自治研究100巻2号、2024年2月号23頁以下)
-
「ドイツのBundesratは二院制の《第二院》か?」(法律時報2023年5月号77頁以下)
-
『ことばの違和感 ~ドイツ語と日本語と私~』(窓蛍舎、2023年)
谷 徹 (評議員)
主な研究テーマ:現象学と間文化性。現象学は、いわゆる客観性の基礎にある「私」を出発点にして、論理や身体や他者などさまざまな問題を解明してきました。とりわけ言語は重要です。「私」は「文」(言語の基本形態)を身に刻み込まれています。これを「文身」と呼べるでしょう。それが他の「文身」をもった人々との関係を可能にし、また複雑にしています。それを少しでも解明したいと考えています。
長年の立命館大学での仕事も2024年度末で終わります。その後は京都に来ることがなくなりそうですので、今は最後の京都の生活を楽しんでいます。
直近の論文・著作
- 『哲学史入門Ⅲ』(共著:NHK出版)2024.
林 英哉 (理事)
主な研究テーマ:ドイツ詩のほか、ドイツ文学において障害がどのように描かれてきたかを研究しています。すべての人が生きやすい共生社会の実現のために、文学ができる貢献について考えています。
ドイツのミュンスターという街で3年間暮らしていました。自然豊かな美しい街でした(写真)。
直近の論文・著作
- 相対化された近代批判―『ハイジ』における病・障害と技術(https://doi.org/10.11282/jgg.164.0_26)
水野 友晴 (監事)
東日本大震災の発生から13年が経ちました。イスラエルには、ユダヤ人の子どもとアラブ人の子どもとが一緒に通う小学校があります。大震災と大津波の惨劇を耳にした彼の地の小学生は、被災した日本の小学生を気遣う絵を私に送ってくれました。その絵は宮城県石巻市立大川小学校に届けられ、しばらくして大川小学校からメッセージと歌がイスラエルの小学生に送られました。当時小学1年生だった日本とイスラエルの子どもたちは、いま成人の年を迎えています。
丸善出版から編著が出版されました。
- 『環境と資源・エネルギーの哲学』(『未来世界を哲学する』第1巻、丸善出版)
- これから50年間の未来世界について考えようと、若手哲学者が集まって書いた12冊の本の第1巻です。環境や資源は誰のためのもので、どのような目的から活用されるべきものなのか。繁栄や幸福とはどのようになることか、そしてそれにあずかるべきは誰なのか。一緒に考えてみませんか。
和田 信 (理事)
専門分野:精神医学、精神腫瘍学、精神病理学
主な研究テーマは、がんなどの病を抱えて生きる人の精神的支援の実践とそれを支える哲学的・精神病理学的基盤の探求です。人と人の「あいだ」、身体をもって限りある命を生きること、生きることと死ぬこと、生命と世界や宇宙との関係について考えています。
随想
- 音楽が趣味で、オルガンでジャズを、チェロでクラシックを演奏します。演奏する行為において「聴く」ことがいかに大切か実感します。人と会う時も、命の危機にかかわる時も、耳を澄まして生命の息吹を聴きとれるように心がけています。
論文・編著・エッセイ
- 「静けさに耳を澄ます―命の音を聴く」 日独文化研究所年報『文明と哲学』16号 2024年
- 「死の不安を抱える人に向きあう―共感と間主観性」 日独文化研究所編『共同研究共生―そのエトス・パトス・ロゴス』 2020年
- 「医療におけるスピリチュアルケア」 共編『共に生きるスピリチュアルケアー医療・看護から宗教まで』 2021年